1970〜1990年代にかけて建てられた住宅の多くに、「アスベスト(石綿)」を含む屋根材が使われていました。
見た目は普通のスレート屋根でも、製造時期や材質によっては有害物質を含んでいる場合があり、リフォームや解体時には特別な対応が必要です。
この記事では、アスベスト屋根の見分け方、安全対策、対応できる工法(カバー工法・葺き替え)、費用と補助金情報までを包括的に解説します。
誤った工事で健康被害や法令違反にならないために、正しい知識を身につけておきましょう。

築30年のスレート屋根にアスベストが含まれていると知り驚きました。専門業者に依頼し、封じ込め型のカバー工法で安全に施工。見た目も一新され安心です。

リフォーム見積で初めてアスベストの存在を指摘され、専門分析を実施。結果をもとに金属屋根でカバー工法を選択。費用も抑えられ、飛散リスクも防げました。

古いセメント瓦にアスベストが含まれており、撤去費用が不安でしたが、自治体補助を利用できました。作業員も資格保有者で、処理まで丁寧に対応してくれました。

みんなの声としては「築30年のスレート屋根にアスベストが含まれていると知り驚いた」「見積で初めてアスベストの存在を指摘された」「自治体補助を利用」などが見られました。
アスベスト判定と安全対策の基礎

アスベスト屋根とは?
アスベスト(石綿)は、耐熱性・断熱性・防音性に優れた鉱物繊維で、かつては建築材料の主流でした。
特に「スレート屋根」や「セメント瓦」「波型スレート(小波・大波)」には高確率で含有されています。
しかし2006年以降、法規制により製造・使用が全面禁止となっています。
主なアスベスト含有屋根材の例
| 屋根材名称 | 製造時期 | 含有率の目安 |
|---|---|---|
| カラーベストコロニアル(初期型) | 1970〜1990年代前半 | 10〜15%前後 |
| 波型スレート(セメント系) | 〜2004年頃 | 10〜20% |
| セメント瓦・平板スレート | 〜2000年前後 | 数%〜10%程度 |
※見た目だけでは判断できず、製造年とメーカー刻印の確認・サンプル検査が必要です。
アスベストのリスク

アスベストは吸い込むと肺に沈着し、長期的に健康被害を引き起こす可能性があります。
主な疾患としては、「中皮腫」「肺がん」「石綿肺」など。
そのため、リフォームや解体時には「飛散防止措置」が法律で義務付けられています。
判定方法(3ステップ)
- 築年数・屋根材の種類を確認
→ 2006年以前なら要注意。製造年の刻印や図面で確認。 - 専門業者による現地調査
→ 外観・形状・厚みから推定。波型スレートは特に要検査。 - 検査機関で分析(サンプル採取)
→ 「JIS A 1481」に基づく分析で含有率を判定。
行政の環境局や自治体でも相談可能です。
「見た目がスレートだから安心」という思い込みが最も危険です。
安全対策の基本
- DIYは禁止。必ず専門業者に依頼する
- 飛散防止剤を使用しながら切断・撤去する
- 防護服・マスクを着用した作業体制が必要
- 廃材は産業廃棄物として適正処理
これらは「石綿障害予防規則」および「大気汚染防止法」によって定められています。
違反すると、**事業者・所有者の双方に罰則(懲役・罰金)**が科される可能性があります。
アスベスト屋根を安全にリフォームする方法として、葺き替えやカバー工法の違いとメリット・デメリットをこちらで詳しく解説しています。
対応可能な工法(カバー工法/葺き替え)
アスベスト屋根への対応は、「封じ込める」か「除去する」かの2通りがあります。
屋根の状態・予算・法的規制に応じて、最適な方法を選びましょう。
カバー工法(重ね葺き)|封じ込め型リフォーム

既存のアスベスト屋根を撤去せず、上から新しい屋根材を被せる工法です。
メリット
- 飛散リスクがない(アスベストを封じ込める)
- 撤去費用が不要なため、コストを抑えられる
- 工期が短く、居住中でも施工可能
- 断熱・遮音性能が向上
デメリット
- 下地の劣化が進んでいると施工できない
- 屋根が重くなり、耐震性に影響する場合がある
- 将来的な葺き替え時に撤去費が二重にかかる可能性
費用・工期目安
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 費用 | 約120〜200万円(30坪) |
| 工期 | 約5〜8日 |
| 推奨屋根材 | ガルバリウム鋼板など軽量金属屋根 |
カバー工法は「飛散させずに安全にリフォームしたい」「下地がまだ健全」というケースに最適です。
葺き替え工法|除去+再施工タイプ

既存のアスベスト屋根を完全撤去し、新しい屋根材に交換する工法です。
安全管理を徹底しながら、下地補修や防水改修を同時に行えます。
メリット
- 下地や防水層まで一新できる
- 将来の維持費が減る(リセット効果)
- 構造上の安心感が高い
デメリット
- 飛散防止措置が必須で、撤去費用が高い
- 工期が長くなる(7〜12日)
- 一時的に騒音・振動が発生
費用・工期目安
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 費用 | 約150〜250万円(30坪) |
| 工期 | 約7〜12日 |
| 注意点 | 許可業者による飛散防止・廃材処理が必須 |
葺き替えを行う場合は、「石綿作業主任者」資格を持つ施工会社に依頼しましょう。
資格の有無は見積書や契約書で必ず確認が必要です。
工法選びの判断基準

| 項目 | カバー工法 | 葺き替え工法 |
|---|---|---|
| 費用 | ◎(安い) | △(高い) |
| 飛散リスク | ◎(低い) | ○(管理次第) |
| 耐久性 | ○(20〜25年) | ◎(30年以上) |
| 工期 | 短い | 長い |
| 下地補修 | 不可または部分的 | 全面可能 |
カバー工法 → 現状維持+安全性重視
葺き替え → 長期的再生+資産価値向上
屋根の劣化が進行している場合は、葺き替えのほうが結果的に安定的で安心です。
対応可否フローチャート
屋根材がスレート系で築20年以上
↓
製造年・型番を確認(2006年以前なら要注意)
↓
専門業者に現地調査・検査を依頼
↓
下地が健全 → カバー工法可
下地が腐食 → 葺き替え工法推奨
費用・期間の目安と補助の確認ポイント

費用相場(30坪目安)
| 工法 | 工事内容 | 費用相場 | 工期 |
|---|---|---|---|
| カバー工法 | 封じ込め+新規屋根施工 | 約120〜200万円 | 約5〜8日 |
| 葺き替え工法 | 撤去+新規屋根+下地補修 | 約150〜250万円 | 約7〜12日 |
追加でかかる費用には、足場・廃材処理・アスベスト検査費などがあります。
特に撤去工事では、**「特別管理産業廃棄物処理費(5〜15万円前後)」**が別途必要です。
補助金・助成金の活用

アスベスト除去や屋根改修には、自治体ごとに補助制度が設けられています。
例:東京都・神奈川県の支援例
- 東京都:アスベスト含有屋根の除去費用を最大100万円まで補助
- 神奈川県:調査費・除去費用の一部補助(上限50万円前後)
- 全国的傾向:住宅リフォーム助成や省エネ改修補助と併用できるケースもあり
申請には、「見積書」「施工前後の写真」「分析報告書」「施工証明書」などが必要です。
自治体の環境課・建築課へ事前に相談し、申請前に着工しないことが条件です。
下記記事でリフォームで使える補助金についての調べ方を徹底解説しています。
補助金の活用によって50万円以上お得になることもあります!リフォームをお考えの際は一度ご確認することをおすすめします!
注意点:不正業者に注意
- 「無料で撤去します」と謳いながら、不法投棄する悪質業者が存在します。
- 契約前に「産業廃棄物処理業者の許可番号」「飛散防止対策計画書」の提示を確認。
- 見積が極端に安い場合は、処理費を省いている危険サインです。
屋根リフォーム全体の費用構成や見積書の見方、補助金の併用方法についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
まとめ:アスベスト屋根は“安全第一”で正しい工法選びを
アスベスト屋根の工事は、見えないリスクを正しく管理することが最優先です。
築20年以上のスレート屋根・波型スレートをお使いなら、まずは専門業者による現地調査と検査を依頼しましょう。
安全性・費用・長期的な住宅維持を考えると、
- 下地が健全 → カバー工法
- 下地が腐食 → 葺き替え工法
が基本的な判断基準になります。
そして、施工会社を選ぶ際は、石綿作業主任者の在籍確認と、廃材処理ルートの明示を忘れずに。



