在来工法による浴室は、職人の手で一つひとつ仕上げられた日本らしい空間です。
しかし、年月の経過とともにタイルのひび割れやカビの発生、水漏れ、床の冷たさなど、快適さや安全性に課題が生じてきます。
「できれば壊さずに使いたい」「思い出のある浴室を現代的に生まれ変わらせたい」という声も多く、在来浴室のリフォームは今も根強い人気があります。
この記事では、在来浴室を快適かつ長持ちさせるためのリフォーム方法を、
構造の理解から施工手順、防水・断熱の再構築、費用相場、注意点まで詳しく解説します。
また、部分補修や塗装・DIYといった低コストな選択肢も紹介します。

冬になるとお風呂が寒く結露もひどかったのですが、断熱材を入れてから快適になりました。タイルも滑りにくく、安全に入浴できます。

床下が湿っているのを見て不安でしたが、防水層を塗り直してから安心して使えるようになりました。施工後はカビも減り、清潔感が続いています。

暗く古い印象の浴室が、白いタイルに変わって一気に明るくなりました。小さな空間でも広く見える工夫をしてもらい、毎日の入浴が楽しみです。

みんなの声としては「寒さと結露が解消された」「水漏れ修理で安心感アップ」「見た目も明るくリニューアル」などが見られました。
在来浴室とは?その特徴と構造

在来浴室(ざいらいよくしつ)とは、タイルやモルタル、防水層を職人が現場で仕上げて作る浴室のことです。
現在主流の「ユニットバス(システムバス)」が工場でパーツ化された組み立て式であるのに対し、
在来工法は家の構造や間取りに合わせて自由に造作できることが特徴です。
1. 在来浴室の構造
在来浴室の典型的な構造は以下のようになっています。
- 床下地:木造(根太・土台)またはコンクリート下地
- 防水層:モルタル+防水塗膜(ウレタンやFRPなど)
- 仕上げ材:タイル、石、珪藻土など
- 浴槽:ホーロー・ステンレス・人造大理石などが主流
- 壁・天井:タイル張りやモルタル塗りが多い
この構造はデザイン自由度が高い一方で、防水性能の維持に職人の技術が大きく左右されます。
また、木造住宅では湿気による劣化リスクも高く、築20年以上で一度は点検すべき部位です。
タイル浴室に見られる劣化のサイン
長年使われてきたタイル浴室には、さまざまな「劣化のサイン」が現れます。
これらを見逃すと、見えない部分で腐食が進み、補修費用がかさむことになります。
1. ひび割れ・欠け
床や壁のタイルに細かなひびが入ると、その隙間から水分が浸透します。
見た目は小さなダメージでも、内部では防水層が破れている可能性があります。
2. 目地の黒ずみ・カビ
目地に黒カビが広がる場合、単なる汚れではなく防水層の劣化が始まっているサインです。
掃除しても取れない、臭いが強くなってきたときはリフォームを検討しましょう。
3. 床の沈み・タイルの浮き
足元が「ふかふかする」「床がたわむ」と感じたら、下地の木材が湿気で弱っています。
この段階では床下の構造材にまで水が回っていることが多く、早急な対処が必要です。
4. 浴槽のがたつき・錆び
古いホーロー浴槽やステンレス浴槽は、下地の支えが傷んでいるとぐらついたり錆びたりします。
浴槽交換や据え直しも含めたリフォームが必要になるケースです。
在来浴室リフォームの流れ

在来浴室のリフォームは、解体→防水層再施工→下地補修→仕上げという工程で進みます。
システムバスのようなユニット交換とは違い、現場の状態を見ながら柔軟に対応することが重要です。
1. 現地調査・見積もり
まず、浴室の構造・寸法・劣化状況を確認します。
業者による現地調査では以下のようなポイントがチェックされます。
- 水漏れ・カビの有無
- 床下の腐食状況
- 配管・排水経路
- 壁・天井の断熱材の有無
この段階で、補修範囲や希望の仕上げ材を決め、見積もりを作成します。
解体してみないと分からない項目(木部補修、防水層の範囲)は「別途見積もり」になるのが一般的です。
2. 解体・撤去
古いタイルやモルタル、防水層を撤去します。
このとき、床下の木材や土台が傷んでいれば交換・補強を行います。
解体時に水漏れの痕跡やシロアリ被害が見つかることも多く、ここで工事範囲が変わることもあります。
3. 防水層の再施工
モルタル下地を整えた後、防水塗膜を塗り重ねて防水層を作ります。
主な工法には「ウレタン防水」「FRP防水」「モルタル防水」などがあり、住宅の構造や予算によって選びます。
4. 断熱材の充填
壁や天井、床下に断熱材を追加します。
断熱改修を同時に行うことで、冬の寒さや結露を防ぎ、快適な入浴空間を実現できます。
5. タイル・仕上げ材の施工
好みのタイルや石材を張り、目地を仕上げて完成です。
最近は防滑タイルや抗菌仕様の素材も多く、デザインと安全性を両立できます。
防水層再施工の重要性

在来浴室リフォームにおいて最も重要なのが「防水」です。
ここが不十分だと、どんなに見た目がきれいでも数年で水漏れやカビが再発します。
1. ウレタン防水
液体状のウレタンを塗り重ねて膜を形成する方法です。
継ぎ目のない仕上がりで密着性が高く、在来浴室でもよく採用されます。
費用は1㎡あたり6,000〜9,000円ほど。
2. FRP防水
浴槽にも使われるガラス繊維強化プラスチックで防水層を作る方法。
耐久性が高く、メンテナンス頻度が少ないのが特徴です。
ただし施工時の臭気が強く、換気対策が必要です。
3. セメント系防水(モルタル防水)
昔ながらの方法で、仕上げと一体化できるメリットがありますが、
現在ではウレタン・FRPに比べると防水性能が劣るため、補助的な施工に留めることが多いです。
断熱改修で冬の寒さを解消

在来浴室が「寒い」と言われる最大の理由は、床下や壁の断熱が不十分だからです。
防水と同時に断熱リフォームを行うことで、暖房効率が向上し、快適さが格段に上がります。
1. 壁・天井の断熱
既存のモルタル壁を撤去してグラスウールや発泡ウレタン断熱材を充填。
結露やカビの原因となる温度差を緩和できます。
2. 床の断熱
床下に**スタイロフォーム(押出法ポリスチレンフォーム)**を入れ、冷気の侵入を防ぎます。
冷たいタイル床も、断熱+床シート施工で温かく変わります。
3. 断熱浴槽の導入
浴槽交換を行う場合は「断熱浴槽タイプ」を選ぶと湯冷めを防止できます。
メーカーによっては、4時間経ってもお湯の温度が2〜3℃しか下がらない製品もあります。
費用相場と工期の目安
在来浴室リフォームは、工事範囲や仕上げ材によって大きく費用が異なります。
| 内容 | 費用相場(税込) | 工期目安 |
|---|---|---|
| 部分補修(防水・目地打ち替え) | 20〜50万円 | 約2〜4日 |
| 全面リフォーム(タイル貼り替え・防水再施工) | 80〜150万円 | 約1〜2週間 |
| 断熱・浴槽交換を含む改修 | 120〜200万円 | 約2週間前後 |
防水+断熱+美観改修を同時に行う場合、100万円前後がひとつの目安です。
業者選びと見積もりのコツ

在来浴室リフォームは、構造を理解した経験豊富な業者に依頼することが大切です。
選ぶ際には以下の点を確認しましょう。
- 防水施工の実績があるか
- 木造住宅の補修に対応しているか
- 施工保証・防水保証が明記されているか
- 解体後の追加見積もりルールが明確か
複数の業者に見積もりを依頼し、**「防水層」「断熱」「下地補修」**が明細に記載されているかチェックしましょう。
部分補修・DIY・塗装による延命策

全面改修までは難しい場合でも、部分的に手を入れることで快適性を高められます。
- 目地の打ち替え:防カビ仕様のコーキングで耐水性アップ
- 床シートの貼り替え:冷たさ軽減+防滑性を向上
- 壁・天井の塗装:専用防水塗料で防カビ・防湿対策
- 換気扇交換:湿気を逃がしカビを防止
これらの方法は、DIYで対応できる範囲もありますが、仕上がりや耐久性を重視するなら業者施工がおすすめです。
- 「システムバス」について詳しく知りたい方へ:
在来浴室との違いやメリット、最新機能の比較をわかりやすく解説します。
- 「浴室塗装リフォーム」についてはこちら:
古いタイルや浴槽を塗装でよみがえらせる方法と、長持ちさせるコツを紹介します。
- 「DIYでできる浴室補修」についてはこちら:
自分でできる簡単メンテナンスや費用を抑えるテクニックをまとめています。
- 「浴室の床リフォーム」についてはこちら:
滑りにくく暖かい床材や、防水シート施工の実例を紹介します。
まとめ:在来浴室を“再生”するという選択

在来浴室は、自由度の高さと温もりのあるデザインが魅力です。
一方で、防水・断熱・メンテナンスを怠ると、快適性や耐久性が損なわれます。
適切な施工と定期的な点検を行うことで、古い浴室も再び安心して使える空間になります。
ポイントまとめ
- 在来浴室は防水層と断熱改修がカギ
- 水漏れや腐食を防ぐには早めのリフォームが必要
- 予算に応じて部分補修やDIYも可能
- 本格的に快適化するなら断熱+防水の同時施工が最適
年月を重ねた浴室だからこそ、今こそ“再生”のチャンスです。
快適で安全、そして長く愛されるお風呂空間へと生まれ変わらせましょう。






