自宅の母屋とは別棟に「離れ」を設け、そこにお風呂を新設・増築するケースが増えています。
二世帯住宅やゲストハウス、趣味の離れ、民泊対応など、利用目的はさまざまです。
しかし、離れにお風呂をつくるには、建築・配管・電気・法規制など多くの条件を満たす必要があります。
この記事では、離れへの浴室増築を検討している方に向けて、
施工工程・配管や断熱の注意点・費用相場・建築法上のポイントを、実例を交えながら詳しく解説します。

高齢の両親が使いやすいように離れにお風呂を増築。段差をなくし、断熱浴槽を採用したことで、冬も暖かく快適に使えています。

離れをゲスト用にリフォームしてユニットバスを導入。排水勾配や換気を工夫し、狭い空間でも清潔で快適な浴室が完成しました。

母屋から離れていたため排水が心配でしたが、中継ポンプを設置して問題なし。工期も予定通りで、見た目もスッキリ仕上がりました。

みんなの声としては「親世帯用の離れ風呂を新設」「民泊対応で独立バスルームを設置」「配管距離の課題を解決」などが見られました。
離れにお風呂を増築する目的とメリット

離れにお風呂を設ける理由は人それぞれですが、代表的な目的として以下が挙げられます。
- 二世帯住宅で親世帯・子世帯の生活動線を分けたい
- 来客用・民泊用の独立バスルームを作りたい
- 趣味用の離れ(サウナ・露天風呂付きなど)を設けたい
- 仕事場・アトリエ兼用の離れで快適性を確保したい
特に最近では、リモートワークスペース+簡易宿泊室としての離れ増築が注目されています。
水回りが完備されていることで、プライベート空間としての価値が一段と高まります。
離れにお風呂を作るための基本条件
離れに浴室を増築するには、建物の位置・給排水経路・法的制約など、いくつかの条件をクリアする必要があります。
母屋の近くに建てる場合と、敷地内の離れた位置に建てる場合でポイントが異なります。
1. 建築基準法上の「同一建築物」か「別棟」か
敷地内であっても、母屋と離れの間に渡り廊下や屋根があるかどうかで扱いが変わります。
- 屋根でつながっている場合 → 「同一建築物」とみなされる
- 完全に独立している場合 → 「別棟」として確認申請が必要
離れを新たに建てる場合は、「増築」ではなく「新築扱い」になるケースが多いため、建築確認申請を提出する必要があります。
2. 敷地内の建ぺい率・容積率
母屋+離れの合計床面積が、敷地の建ぺい率・容積率を超えていないか確認が必要です。
すでに上限に達している場合は、離れを増築できない可能性もあります。
3. 給水・排水・電気の引き込み
母屋から配管を延ばすのか、離れ専用に新設するのかでコストが大きく変わります。
距離が離れている場合は、配管の延長費用+ポンプ設置費用が発生することもあります。
4. 断熱・防寒対策
母屋と違い、離れは外気に接する面積が多いため、断熱材・二重サッシ・浴室暖房などを組み合わせることが重要です。
断熱性を確保しないと、冬場は極端に寒くなり、給湯や排水の凍結リスクも高まります。
離れ風呂の施工工程

離れに浴室を新設する場合の工事は、建物本体の構築+水回りの設備工事の2段階に分かれます。
それぞれの工程と注意点を順に見ていきましょう。
1. 設計・確認申請
まずは離れの規模・配置・構造を設計します。
このとき、浴室の位置や配管ルートも同時に計画することが重要です。
敷地の排水勾配や給湯位置を無視すると、後から大掛かりな修正が必要になることがあります。
- 建築士またはリフォーム業者に現地調査と設計相談を依頼
- 離れが10㎡を超える場合は、建築確認申請を提出
- 建ぺい率・高さ制限・防火地域などを事前確認
設計段階で「浴室の配置」と「排水位置」を明確にしておくと、配管工事がスムーズに進みます。
2. 基礎・配管工事
建物の基礎を打設する際に、給排水管の立ち上がり位置を同時に設けます。
母屋から離れている場合は、地中を掘削して配管を延長します。
このとき、勾配が足りないと排水が逆流するため、正確なレベル管理が必要です。
- 給水:母屋のメイン管から分岐または新設
- 排水:敷地内の排水桝へ勾配を確保して接続
- 電気:母屋の分電盤から専用ブレーカーを延長
- ガス:プロパンボンベ設置または母屋から引き込み
配管距離が10mを超える場合は、給湯の温度低下防止・水圧補助ポンプ設置を検討します。
3. 建物本体・断熱施工
離れの構造は「木造」「軽量鉄骨」「プレハブ」などがありますが、浴室を設ける場合は断熱性と防湿性の確保が最重要です。
- 壁・天井にグラスウール・発泡ウレタン断熱材を充填
- 床下には防湿シート+断熱パネルを敷設
- 結露防止のために通気層を確保
この段階で、配管の保温チューブ施工も同時に行います。冬季凍結を防ぐため、配管はできる限り屋内を通すのが理想です。
4. 浴室本体の設置
離れの浴室には、**システムバス(ユニットバス)**を採用するのが一般的です。
現場組み立てが容易で、防水性・断熱性に優れているため、離れのような小規模空間に最適です。
設置手順は以下の通りです。
- 床防水パンを設置
- 壁パネル・天井を組み立て
- 浴槽を据え付け、給排水を接続
- 電気・換気・照明を取り付け
設置完了後、通水テストを行い、漏水がないか確認します。
最近では、断熱浴槽・浴室暖房乾燥機付きタイプが人気で、離れでも快適に利用できます。
5. 給湯・排気・仕上げ工事
最後に、給湯器の設置と仕上げ工事を行います。
給湯器は母屋と共用するか、離れ専用に設置するかを選びます。
- 共用タイプ:配管距離が短い場合に有効。費用を抑えやすい。
- 独立タイプ:距離がある場合や別世帯利用時におすすめ。
また、離れは密閉空間になりやすいため、換気扇・窓・排気ダクトの配置も慎重に検討します。
法令上、浴室は換気設備の設置が義務化されています。
離れ風呂の注意点(配管・排気・法令)

離れにお風呂を増築する際は、建築基準法や給排水設備の規定を遵守しなければなりません。
特に以下の3つの観点は、見落としがちなポイントです。
1. 給排水と勾配の確保
離れが母屋から遠いほど、排水の勾配が取りにくくなります。
通常、排水管は1mあたり2〜3cmの傾斜が必要です。勾配が不足すると、
排水が逆流し、悪臭や詰まりの原因になります。
また、排水桝までの距離が長い場合は、中継ポンプ(汚水ポンプ)の設置も検討します。
給水側では、圧力低下を防ぐための圧送ポンプを利用することもあります。
2. 換気・排気の設計
浴室には必ず換気設備が必要です。
母屋から離れている場合、自然換気だけでは湿気がこもりやすいため、**強制換気式(ダクト排気)**を採用します。
湿気を確実に排出することで、カビや木部腐食を防ぎ、建物の耐久性を高められます。
また、離れの浴室をサウナや温泉風に仕上げる場合は、屋根裏や壁内の通気経路も確保しておくと安心です。
3. 法令・登記の確認
離れに浴室を設けると、建物用途が「居室付きの附属建物」として扱われることがあります。
この場合、建築確認申請・登記変更が必要です。
- 建築確認:10㎡を超える離れは原則申請が必要
- 登記:増築面積に応じて建物登記の変更が必要
- 地域条例:防火地域・景観地区などでは追加制限あり
違法建築とならないよう、設計段階で自治体の建築指導課に確認することをおすすめします。
離れ風呂の費用相場と工期

費用は建物の構造や距離、仕様によって大きく異なりますが、以下が一般的な目安です。
| 工事項目 | 費用相場(税込) | 工期目安 |
|---|---|---|
| 基礎・躯体工事(木造6〜8畳) | 約100〜200万円 | 約2〜3週間 |
| 配管・電気・ガス引き込み | 約20〜50万円 | 約3〜5日 |
| ユニットバス設置 | 約60〜120万円 | 約3〜4日 |
| 内装・断熱・仕上げ | 約30〜70万円 | 約1週間 |
| 合計目安 | 約200〜400万円前後 | 3〜4週間程度 |
母屋との距離が長い場合や、敷地形状が複雑な場合はさらにコストが上がる傾向にあります。
離れ風呂を快適に使うための工夫

- 浴室暖房乾燥機+断熱浴槽で快適性アップ
- 外壁材・屋根材を母屋と統一して景観を保つ
- 屋外照明やアプローチ照明で夜間の安全性確保
- 防犯センサーやスマートロックの導入
設備選び次第で、離れでも母屋同様に快適な入浴空間が実現します。
- 「新築での浴室計画」について詳しく知りたい方へ:
新築住宅での浴室設計や水回り配置の考え方、注意点を紹介します。
- 「外壁との取り合い施工」についてはこちら:
離れの防水や外壁の取り合いで失敗しないためのポイントを詳しく解説します。
- 「戸建ての浴室リフォーム」についてはこちら:
一般的な戸建て浴室の改修事例と費用の目安をまとめています。
まとめ:離れ風呂は「独立空間」として計画的に設計を
離れへのお風呂増築は、家族構成や生活スタイルに合わせて自由に設計できる反面、
配管・排気・法令・断熱など、専門的な知識が必要な工事です。
しかし、適切な設計と施工を行えば、母屋とは別の快適な入浴空間を実現できます。
この記事のポイント
- 離れ風呂は「建築」「配管」「断熱」の3点が重要
- 排水勾配や換気設備を軽視するとトラブルの原因に
- 法的手続きを怠ると後々の登記・売却時に影響
- 費用相場は約200〜400万円、工期は約1か月が目安
離れを快適な「もう一つの住空間」として育てるためにも、
設計段階から信頼できる施工会社に相談し、長期的な使い勝手を見据えた計画を立てましょう。





