マンションの外壁工事は、単なる建物の「塗り替え」ではなく、
資産価値を守り、居住者の安全性を確保するための大規模修繕工事です。
計画から完了まで約半年〜1年を要し、足場・騒音・住民対応など、管理側の負担も大きいのが実情。
この記事では、管理組合・法人管理者の視点から、
マンション外壁工事の流れ・注意点・見積管理のポイントをわかりやすく整理します。

工事前に説明会を開き、ベランダ利用制限や騒音時間を明確に伝えました。住民の理解が得られ、苦情はほとんどなし。事前の説明が本当に大事だと実感しました。

複数業者に見積を依頼し、仕様を比較して選定。価格差は大きかったものの、実績のある会社を選び結果的に満足。管理側として責任を果たせました。

定例会議で進捗報告をこまめに行い、理事会内の情報共有を徹底。小さなトラブルもすぐに対応でき、最終的に住民から「安心して任せられた」と感謝されました。

みんなの声としては「住民説明会で理解を得られた」「入札でコストを抑えつつ品質確保」「工期管理と報告で信頼を得た」などが見られました。
大規模修繕の流れ

マンションの外壁工事は、建物全体の「劣化診断」から始まり、
設計・入札・施工・検査という流れで進行します。
一般的な修繕サイクルは築10〜15年ごとに1回程度が目安です。
1. 劣化診断と改修計画の立案

まず、建築士や外壁診断士による現地調査を実施し、
外壁の「ひび割れ」「剥離」「シーリング劣化」などを確認します。
診断報告書には以下の内容が含まれます。
- 外壁タイルの浮き・クラック箇所
- シーリング(目地)の劣化状態
- 鉄部や屋上防水の腐食状況
- 修繕優先順位と概算費用
この報告書を基に、修繕委員会や理事会で実施計画を決定します。
次に、専門設計コンサルタントと契約し、詳細な仕様書・設計書を作成します。
外壁リフォームの一般的な費用相場については、こちらの記事で詳しく解説しています。
2. 設計・仕様書の作成

設計コンサルタントは、
外壁の仕上げ材・塗料の種類・施工方法・保証年数などを明記した仕様書を作成します。
仕様書に盛り込む主な項目は次のとおりです。
- 使用塗料のグレード(例:シリコン・フッ素・無機)
- 施工範囲と面積
- 足場方式(枠組み・ゴンドラ)
- 安全対策・仮設設備の仕様
- 工事スケジュール案
この段階で設計内容を明確にしておくことで、後の入札比較が公平になります。
3. 入札・施工業者の選定

仕様書が確定したら、複数の施工会社へ入札を依頼します。
近年では「設計監理方式」と呼ばれる、設計者が監理も行う形態が主流です。
選定のポイント:
- 管理組合施工実績(特に中〜大規模マンション)
- 有資格者(1級建築施工管理技士など)の常駐有無
- アフター保証と保険対応(瑕疵担保)
- 入札金額と工程管理体制のバランス
入札後は理事会で施工会社を決定し、総会で承認を得て契約締結します。
足場・騒音・工程管理

足場設置と安全確保
マンション外壁工事では、全体を囲う足場と養生ネットの設置が必要です。
工事期間は規模により2〜6ヶ月。
安全性と作業効率を両立させるため、以下のような管理ポイントがあります。
- 足場設置は建物周囲2m以上の安全距離を確保
- 出入口・駐車場周辺は仮設通路で代替
- 養生ネットで塗料飛散を防止
- 夜間照明や防犯カメラの設置で安全対策
設置前には必ず、全戸への通知と共用部の利用制限案内を行います。
騒音・塗料臭への配慮
外壁補修や高圧洗浄時には、どうしても騒音や臭気が発生します。
そのため、管理者は作業スケジュールと時間帯制限を徹底する必要があります。
一般的な作業可能時間帯:
- 平日:9:00〜17:00
- 土曜:9:00〜12:00
- 日曜・祝日:休工
特に「高圧洗浄」「タイル撤去」「電動工具使用」は騒音が大きいため、
近隣・住民への事前説明会を行うことでトラブルを未然に防げます。
工程管理と進捗共有

工事中は、現場監督・管理組合・設計監理者の三者で**定例会議(週1回程度)**を実施し、
進捗・安全・品質を確認します。
よくある工程の流れ:
- 足場設置・養生
- 高圧洗浄
- 下地補修(ひび・シーリング)
- 下塗り・中塗り・上塗り
- 検査・手直し・撤去
工事写真は日ごとに記録し、クラウドや掲示板で共有する方法が増えています。
住民対応と告知

工事説明会と掲示活動
住民への説明会は、工事開始の1〜2ヶ月前に開催するのが一般的です。
内容は次のような点を明確にします。
- 工事期間・作業時間・休日
- 足場設置範囲・ベランダ使用制限
- 窓の養生スケジュール
- 洗濯・エアコン使用への影響
- 緊急連絡先と担当者名
説明会後は、全戸配布資料+掲示板ポスターで継続的に告知を行います。
居住者からの問い合わせ対応
工事中は「洗濯ができない」「塗料の臭いが気になる」などの苦情が発生することもあります。
そのため、管理側では窓口の一本化と即時対応体制が重要です。
- 専用フリーダイヤルやメール窓口を設置
- 現場監督と連携して当日対応
- 記録簿を残して再発防止策に反映
特に居住者の心理的不満を軽減するためには、
「工事の目的とメリット(防水・断熱・美観)」を繰り返し説明することが効果的です。
共用部・ベランダの使用制限
足場設置期間中は、ベランダ立ち入り禁止やカーテン閉鎖が求められます。
生活への影響が大きいため、
- 使用制限日を事前に配布
- 延長がある場合は即日再通知
- 緊急時(雨漏り・事故)は迅速に掲示更新
といったきめ細かい対応が求められます。
見積・入札と仕様書

見積比較のポイント
複数業者からの見積を比較する際は、金額だけで判断しないことが重要です。
比較すべき主要項目:
- 塗料グレードと耐用年数
- 下地補修範囲と単価
- 足場・洗浄・塗装の工程別費用
- 保証期間とアフター点検内容
- 仮設・安全対策費が含まれているか
価格が極端に安い場合、下地補修を省略していることもあるため要注意です。
入札方式の選び方
マンション外壁工事では、次のような入札方式が一般的です。
| 入札方式 | 特徴 | メリット |
|---|---|---|
| 一般競争入札 | 多数の業者が参加可 | 価格競争でコスト抑制 |
| 指名競争入札 | 信頼できる業者を限定 | 品質・実績の安定 |
| 企画提案型 | 提案力を重視 | デザイン性・新工法に対応 |
中規模以上のマンションでは「設計監理+指名競争入札」の組み合わせが最も安定しています。
仕様書の確認項目
契約前に必ずチェックすべき仕様書のポイントは次の通りです。
- 塗料のメーカー・品番・色番号
- 下地処理方法(浮き・クラック対応)
- 塗布回数(下塗り・中塗り・上塗り)
- 天候による作業中止条件
- 保証書の発行条件
仕様書は工事品質の基準になるため、理事会承認前に専門家へ確認依頼するのがおすすめです。
施工会社選びや比較のコツは、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
まとめ:計画的な進行と住民配慮が成功の鍵

マンション外壁工事は、費用・工期・住民対応のバランスが重要です。
管理側の視点では、以下のポイントを押さえることでトラブルを防げます。
- 診断・設計・入札を透明に進める
- 工程管理と安全対策を徹底する
- 居住者への説明・周知を怠らない
- 仕様書・保証内容を確認して契約する
管理組合・法人担当者にとっては大きな責務ですが、
適切な計画と信頼できる施工会社の選定で、資産価値を守る確実な投資につながります。


