「冬は寒いから」「音がうるさい」「電気代が気になる」
そんな理由で 24時間換気を止めてしまう家庭は意外と多い ですが、これは住宅性能が高くなった現代では、非常にリスクの大きい行為です。
結論から言うと、
24時間換気は止めないことが前提の“生命線” です。
換気を止めると、
- CO₂濃度の上昇
- 結露とカビの急増
- ハウスダスト蓄積
- VOC(揮発性有機化合物)の高濃度化
- 壁内結露による家の寿命低下
- 呼吸器疾患リスクの増大
など、科学的に“確実に起きる”悪影響が生じます。
この記事では、
24時間換気の仕組み、止めるとどうなるか、健康・家の耐久性への影響、正しい運用方法、止めていいケース/ダメなケース を徹底解説します。
24時間換気とは何か(仕組みと目的)

まず「24時間換気はなぜ必要なのか?」を理解することが重要です。
シックハウス対策として義務化された
2003年、建築基準法が改正され、
全ての新築住宅で24時間換気設備の設置が義務化 されました。
理由は、建材・接着剤などに含まれる
- ホルムアルデヒド
- トルエン
- キシレン
などの有害物質(VOC)が健康被害を引き起こしたためです。
可視化できない有害物質を排出し続けるために、
24時間換気は“常時オン”が前提として設計されている のです。
換気方式(1種・2種・3種)と一般住宅で多いパターン
住宅の24時間換気は主に3種類。
- 1種換気:給気も排気も機械(最も効率が良い)
- 2種換気:給気のみ機械(病院・クリーンルームなど)
- 3種換気:排気のみ機械、給気は自然(一般住宅の9割がこれ)
特に3種換気は、排気ファンを止めると 空気の通り道が完全に途絶える ためリスクが高い方式です。
住宅の気密性が上がった現代こそ換気が必須
昔の家は“スースー”とすき間風がありましたが、
現代の住宅は高気密化しているため、
換気を止めると一瞬で密閉空間になる のが特徴です。
つまり、24時間換気とは
「高気密住宅で人が安全に生活するための装置」
なのです。
24時間換気を止めると起こる科学的リスク
ここからは「止めるとどうなるか」を科学的に整理します。
CO₂濃度が急上昇(脳機能低下のメカニズム)

人は呼吸によってCO₂を排出します。
密閉状態では数時間でCO₂はどんどん蓄積。
科学的指標:
- 1,000ppm超:眠気・だるさ
- 1,500ppm超:集中力・判断力の低下
- 2,000ppm超:頭痛・倦怠感
- 3,000ppm超:危険レベル(オフィス基準では完全NG)
24時間換気を止めた寝室では、
朝にCO₂が2,000ppmを超える例も多数報告 されています。
つまり、換気停止は
脳機能の低下 を引き起こす確実な要因です。
湿度上昇 → 結露 → カビ発生が急速に進む

人の生活で室内には大量の水蒸気が発生します。
- 呼吸:1人あたり1日400〜600ml
- 料理:1,000〜2,000ml
- 風呂:1,500〜2,000ml
- 洗濯物室内干し:2,500〜3,000ml
換気を止める=水蒸気の逃げ場がなくなるため、
すぐに湿度が60〜70%を超えます。
湿度60%以上
→ カビが2倍のスピードで繁殖
湿度70%以上
→ ダニが一気に活性化
これは科学的に証明されている事実です。
ハウスダスト・PM2.5が滞留し、呼吸器に悪影響
換気停止で特に危険なのが「粒子の滞留」。
以下が室内に密集します。
- ハウスダスト
- ペットの毛
- PM2.5
- 花粉
- タバコ臭
- 調理臭
これらは人が吸い込むため、
喘息・鼻炎・アレルギー悪化の原因 になる可能性があります。
VOCが高濃度化し、めまい・頭痛の原因に
新築やリノベ後の住宅には、大量のVOCが存在します。
換気を止めると1時間で数倍に濃度が跳ね上がる研究結果もあります。
症状:
- 目の刺激
- 頭痛
- めまい
- 喉の乾燥
- 倦怠感
特に子どもと高齢者は影響を受けやすい層です。
結露・カビが家の寿命を縮める科学的根拠

換気停止が最も危険なのは 見えない“壁内結露” を引き起こす点です。
壁内結露とは?外から見えない内部劣化
室内湿度が高いと、
壁の内部に水が入り込み、目に見えない位置で結露を起こします。
結果として、
- 木材の腐朽
- 断熱材の劣化
- カビの固定汚染
が進行し、家の耐久性がどんどん落ちていきます。
断熱材の性能低下
湿気を吸った断熱材は、
R値(断熱性能)が40〜60%低下
というデータもあります。
断熱材が機能しなくなる → 冷暖房効率が落ちる → 光熱費上昇
の負の連鎖が始まります。
木材の腐朽菌が大量繁殖
木の含水率が20%を超えると、
腐朽菌(木を腐らせる菌)が繁殖を開始します。
換気停止は家の寿命を■確実に■短くします。
停止しても良いケースと“絶対ダメなケース”

「止めてもいい時間帯」や「例外ケース」も科学的に整理します。
一時停止OKなケース
- フィルター掃除
- 換気扇の交換
- 機器点検
10〜30分程度なら問題なし。
絶対に止めてはいけないケース
- 寝室の使用時
- 室内干ししている時
- 調理後1時間以内
- 新築・リノベ後1年以内
- ペット飼育
- 幼児・高齢者がいる家庭
- ハウスダストアレルギー持ち
これらは 24時間換気が必須 の状況です。
24時間換気を止めないための賢い運用方法
「電気代が気になるから止めたい」という声もありますが、
科学的にも現実的にも止めるメリットはほぼありません。
電気代は意外と小さい(1日10〜20円)
一般的な24時間換気の電気代は
月300〜600円程度。
エアコンの“5分の1以下”です。
節約効果よりリスクの方が圧倒的に大きいと言えます。
フィルター掃除の頻度

フィルターが詰まると吸排気量が減り、
“止めていないのに換気できていない” 状態になります。
推奨頻度
- 2〜3ヶ月ごと
- 花粉・PM2.5が多い地域は毎月
ダクト清掃は10〜15年に1度
ダクト内にホコリ・油脂が溜まると
ダクト内でカビが繁殖する例もあります。
窓開け換気と24時間換気は役割が違う
窓開け換気:瞬間的に空気入れ替え
24時間換気:常時汚染物質を排出し続ける
どちらか一方を止めてよいものではありません。
24時間換気を止めると起こる症状チェックリスト
自宅の空気環境が悪化しているサインです。
- 朝の頭痛・倦怠感
- 料理のにおいが消えない
- 浴室や押入れの黒カビ
- 寝室の湿度が高い
- ペットのにおいがこもる
- 加湿器を使うと窓がすぐ曇る
- CO₂測定器が常に1,000ppm以上
1つでも当てはまれば換気不足です。
停止リスクをゼロに近づける改善策
換気機器の交換(寿命10〜15年)
古くなると風量が落ちるため、
機器交換が非常に効果的です。
ダクトレス換気に切り替える
壁に開けるだけのタイプで、
換気効率が高く騒音が少ないのが特徴。
マンションで換気量が足りない場合
- サーキュレーター併用
- 内窓追加で“風路”を作る
- キッチン・浴室の換気扇を適度に運用
まとめ|24時間換気は止めてはいけない“家の生命維持装置”
最後にポイントをまとめます。
- 24時間換気は 健康維持・家の耐久性を守る必須装置
- 止めると CO₂・湿度・VOC・ハウスダストが一気に上昇
- 結露・カビが発生し、家の寿命を縮める
- 電気代は月数百円でメリットしかない
- 正しい換気は“空気の質”を保つ最重要要素
「寒いから」「音が少し気になるから」という理由で停止するのは、
医学的にも建築学的にも絶対に推奨できません。
空気は“見えないインフラ”。
24時間換気を正しく使うことは、家族の健康と家を守る最も手軽で確実な方法です。
