老朽化・耐震性の不安・間取り変更の限界——。
リフォームと比較しながら検討した結果、「建て替え」の方が長期的に得になるケースは少なくありません。
ただし、建て替えは 本体工事費だけでなく、解体・仮住まい・外構復旧 など複数項目が積み重なるため、
総額が分かりづらく、費用計画の立て方が最も難しい工事でもあります。
この記事では、一軒家の建て替え費用について、
内訳・仕様別の総額レンジ・工期・会社選びのポイント までわかりやすく解説します。
築40年の家を建て替えました。解体費が想定よりかかりましたが、断熱性能が大幅に向上し、冬でも暖かい快適な住まいに。設備も一新されて住みやすさが格段に上がりました。
リフォームと迷いましたが、家全体の老朽化から建て替えを選びました。仮住まい期間は長かったものの、自由設計で理想の間取りになり、暮らしがとても快適です。
建て替えに合わせて外構も全面的にやり直しました。古かったアプローチや駐車場も綺麗に整備され、家の印象が一気に明るくなりました。総額は高いですが満足度は高いです。
みんなの声としては「築40年の家を建て替え」「リフォームと迷いましたが、家全体の老朽化から建て替え」「建て替えに合わせて外構も全面的にやり直した」などが見られました。
本体・仮住まい・解体・外構復旧の内訳
一軒家の建て替え費用は「本体工事費だけ見てしまう」ことで判断を誤りがちです。
実際には、本体費用以外の 付帯工事・諸費用 が総額の30〜40％を占めるケースもあります。
以下、一軒家建て替えの主な内訳を詳しく解説します。
本体工事費：1,500〜2,800万円
建物そのものの建築費です。
坪単価は 50〜100万円 が一般的で、工法・仕様・断熱性能で大きく変動します。
本体費用に含まれる項目の例：
- 基礎工事
- 木造フレーム（または鉄骨）
- 外壁、サッシ、断熱材
- 屋根
- 内装（床・壁・天井）
- 水回り4点（キッチン・浴室・洗面・トイレ）
- 電気・給排水
設備グレードを上げれば天井なく上がりますが、
標準仕様でもZEHレベルの断熱・省エネ性能に対応できるメーカーが増えています。
解体費：80〜200万円
建て替えでは、まず 既存住宅の解体 が必要です。
解体費は建物の構造・面積で変わります。
| 構造 | 坪単価 | 例（30坪） |
|---|---|---|
| 木造 | 3〜5万円 | 90〜150万円 |
| 鉄骨造 | 4〜7万円 | 120〜210万円 |
| RC造 | 5〜8万円 | 150〜240万円 |
また、解体時には以下の追加費用が発生することがあります。
- アスベスト除去（5〜50万円）
- 植栽撤去・庭石撤去（5〜20万円）
- 敷地内ブロック塀の撤去（5〜15万円）
- 地中埋設物（浄化槽・瓦礫など）の処理（5〜30万円）
費用に幅が出る理由は、この追加項目が土地ごとに大きく異なるためです。
仮住まい・引越し：20〜80万円
建て替え期間中の仮住まいが必要になります。
一般的な期間は 4〜7ヶ月。
費用目安：
- 仮住まい賃料：7〜15万円/月
- 引越し費用：10〜25万円
- 家財保管費：3〜10万円
地域によっては「自治体支援制度」で補助金が出ることもあります。
外構復旧費：50〜200万円
建て替え工事の際、敷地内の以下の設備も損傷します。
- アプローチ
- 駐車場コンクリート
- フェンス・門柱
- 庭・植栽
- 給排水マスの再設置
建物が新しくなるのに比べて外構が古いままだと、
全体の印象が大きく損なわれるため、外構同時リフォーム が多くのケースで選ばれます。
→ 外構・庭まわりの費用構成はこちらのページで詳しく解説しています。
その他の諸費用：20〜80万円
- 建築確認申請
- 中間検査・完了検査
- 地盤調査
- 水道負担金
- 登記費用（建物滅失・新築登記）
- 火災保険の更新
本体工事費に入らないため注意が必要です。
仕様別の費用レンジと工期
建て替えの総額は、建物の仕様と工法によって大きく変動します。
ここでは代表的な仕様と費用レンジを整理します。
仕様1：ローコスト（延床25〜30坪／総額1,800〜2,300万円）
主な特徴：
- 企画型住宅（間取り固定）
- 設備は標準仕様
- 外壁サイディング
- 断熱はZEH基準未満が多い
メリット
- コストを抑えられる
- 工期が早い
デメリット
- 間取り変更の自由度が低い
- 長期的な光熱費は高め
仕様2：中間グレード（総額2,300〜3,000万円）
最も選ばれる価格帯。
自由設計で断熱性能もZEHレベルに対応。
内容例：
- 外壁グレードUP
- 樹脂サッシ・Low-E複層ガラス
- 洗面やキッチンの仕様が選べる
- 耐震等級2〜3に対応可
費用バランスと性能のバランスが最も優れている層です。
仕様3：高性能・高仕様（総額3,000〜4,000万円以上）
ハウスメーカーの高性能ラインや注文住宅に該当します。
特徴：
- 耐震等級3＋制震ダンパー
- 断熱等級6〜7
- 木造軸組＋パネル工法
- 収納造作が豊富
- キッチン・水回り高級グレード
- バルコニーや吹き抜けなどデザイン性が高い
長期的には光熱費削減・資産価値保持に優れるのが魅力です。
工期の目安
建て替えの総工期は 4〜7ヶ月。
内訳：
- 解体：2〜4週間
- 基礎工事：3〜4週間
- 上棟〜内装：2〜3ヶ月
- 外構復旧：2〜4週間
降雪地域・梅雨・台風時期は工期が伸びる可能性があります。
→ 既存建物を活かす選択肢として「増築費用」も比較検討すると判断しやすくなります。
建築会社の選び方
建て替えはリフォームよりリスクも予算も大きいため、
建築会社選びを慎重に行うことで、工事品質や総額に大きな違いが出ます。
以下、重要ポイントを整理します。
1. 構造・断熱性能を数値で提示する会社を選ぶ
- 耐震等級
- 断熱等級
- UA値
- C値（気密）
これらを 計算書付きで提示できる会社 は工事品質が高い傾向があります。
2. 建て替えの実績が多いか
建て替えは「解体＋基礎確認＋接続工事」が必要なため、
新築のみの会社より、建て替え実績の多い会社 が安心です。
3. 解体費を含む総額見積を出す会社
建築会社によっては「解体費は別」として提示するケースがあります。
総額を見誤る原因になります。
確認すべき項目：
- 解体
- 外構復旧
- 諸費用
- 地盤改良
4. 住みやすさの提案力があるか
建て替えは0から家を作り直すため、提案力が差となります。
チェックポイント：
- 家事動線
- 収納提案
- 断熱窓の種類
- 間取り変更の自由度
シミュレーションや3D提案がある会社は分かりやすいです。
5. 値引きではなく「仕様調整」で価格調整する会社を選ぶ
値引き頼みの会社よりも、
- 外壁グレード変更
- 設備グレード調整
- 造作を減らす
- 断熱材の種類見直し
といった 仕様の最適化で費用調整する会社 のほうが、
長期的な満足度が高くなります。
費用表（建て替えの総額イメージ）
以下は、一般的な一軒家（延床30坪想定）の建て替え費用目安です。
| 費用項目 | 金額目安 |
|---|---|
| 本体工事費 | 1,500〜2,800万円 |
| 解体費 | 80〜200万円 |
| 仮住まい・引越し | 20〜80万円 |
| 外構復旧 | 50〜200万円 |
| 諸費用 | 20〜80万円 |
| 総額 | 約1,700〜3,300万円 |
→ 建て替えとリフォームのどちらが得か、判断基準は「4-1 判断」記事にまとめています。
まとめ｜建て替え成功のカギは「総額把握」と「性能の数値化」
建て替えは多額の費用がかかる工事ですが、
適切に計画すれば 耐震・断熱性能を大幅に引き上げ、資産価値も向上する 大きなメリットがあります。
重要ポイントまとめ：
- 総額は1,700〜3,300万円（延床30坪の一般例）
- 本体費用だけでなく付帯工事が30〜40％発生
- 仕様で費用は大きく変動（等級・設備・外装）
- 実績が多く、構造計算を明示する会社を選ぶ
- 解体・外構を含む総額比較が必須
長期の住まい計画として、建て替えは有力な選択肢です。
まずは現地調査と総額見積で、適切な仕様と優良会社を選びましょう。